「…え?」
俺は思わず聞き返した。
半分聞いている様な聞いていない様な感じで、さっきから話を聞いていたのだが、
今のは…今のは……えっと…?

「…堕威君、タバコの灰が落ちとるで。
 ってかタバコ吸うな、悪影響やろ」
「あ、え、い、いや、そ、その、あの、えっと、
 そ、それより、今、お前…その、な、な、何て…何て言っ…?」
「は?」
「いや、その、あの…でき…できっ……?」
「ああ、出来ました」
「な、な、な、何が…」

「俺とお前の子。只今3ヶ月」

な、な、何ッ!?
ちょ、ちょっ、ちょっと待て、ちょっと待てやもちゃん。
3ヶ月ゆーたな今。
3ヶ月って言うとアレか、3ヶ月前の行いが原因って事やろ?
もしかして、もしかして…あの日?
あの日なん?
あの日の…

「多分そうやな」

あくまでも冷静に、俺の心を読んで答えてくる。
マジかい。
「お前が酔っ払って帰ってきて、
 俺の制止も聞かへんで俺を押し倒したあの日が原因や多分」
やっぱりそうですか…!
やっぱり酒の勢いですか俺!

…嗚呼。 …でも、そういや付き合い始めも、
俺が酔っ払った勢いで押し倒してしもうて、それで始まったんやっけ…
ホラ、俺って奥手やし…
酒の勢いでも借りへんと…

「それとこれとでは話がちゃうで。しかも奥手とか嘘やろ」
やっぱり俺の心を読みきって心夜さんは答えてきた。
すみませんごめんなさい俺がいけません。
でも心夜!
俺奥手やでホンマ!…多分な。

こいつ、子供は要らんと言ってたのになぁ。
愛溢れてこんな事になってしもうて本当ごめんなさい。
…でも、素直に謝ったら、ちょっと頬を赤らめて、
「別にアンタとの子なら構わない」
と言ってくれた。

何て可愛いやつなんやろ。
普段もそれ位しおらしいといいんやけど。
…とか考えてたら、また「今余計なこと考えたやろ」と言われた。
…俺、そんなに顔に出やすいですか?

それはそうとしてだ。
皆に何て言えばええんやろ。
やっぱり今時はメールで済ませるんやろか?
でも子供やで?
一大事やで?
しかも俺とやもちゃんの子やで?
可愛いに決まっとるやろ!
…って、おっと。
それは関係なかったわ。
やっぱりちゃんと皆の前でゆーた方がええんかな?
ずっと連れ添ってきた仲間なんやし。
でも何か色々言われるのも嫌やし…
でもメールだともしかしたら届かへんかも知れへんし…
電話するってのもありかも知れへんけど、
イチイチ電話しとったら時間かかるしな…
いや待て、でも…

「堕威君」
俺が一生懸命考えているというのに、こいつは…!
むっちゃビビったやん!
あ?何?俺のケータイが何?
え?メール来とるって?おうサンキュー。
…ん?何かぎょうさん来とるで?
京君に、薫君に、トシヤに…
…何で?

俺が困惑していると、心夜は最強の一言を放った。
「とりあえず、病院から帰る間に一通り知り合いにはメールしといたから」
俺は、その場に崩れ落ちた。

結婚式も恐らく大変な事になりそうだと薄々感じながら。